bokiwokangaeruのブログ

複式簿記と読書と日本酒についての備忘録です

会計学の誕生

 

会計学の誕生  渡邉 泉(著)

【感想】
何度目かの再読。やはり読みやすくはない。でも、なぜか定期的に読み直してしまう。会計の歴史に関する書籍では、入門的に人気のある本は「会計の世界史」だが、個人的に少し物足りないので、当書の興味のある個所をいつもつまみ読みしています。今回は複式簿記の初期発生過程を再確認したくて再読。当書は少し読みづらいと思いますが、CF計算書が発明される過程を知るためだけでも、読む価値があります。「よくぞ気づいた」と思うはずです

【まとめ】
■現金取引と違い信用取引では、取引の決済が後日になり「返した、まだもらっていない」のトラブル
■人間の記憶には限界
■日々の正確な取引記録が必要に。それが複式簿記

■簿記が企業間の取引を記録する技法として生まれということは、その誕生から取引を二面的に捉えていたことになる
■取引は二者の間で行われるため、両者の記録が必要になるから

■必然の結果として簿記は借主(借方)と貸主(貸方)の二重記録、したがって複式簿記として舞台に登場
■それが損益計算と結びつく時、フローとストック、原因と結果という二面からの計算になる。
複式簿記の本質は、継続記録によるフローの側面から、有高計算によるストックの側面から、の損益計算の二重計算

■複式と呼ばれる最大の要因は、取引を単に借方と貸方の双方に分けて記帳するからではない
■最古の勘定記録は借方が前半に、貸方が後半に記帳される貸借前後分離方式
■「私はAに100貸与した、Aは~までに返済すべし」のように文章で記帳

■中世ヴェネツィアは貴族によって支配された世界。血縁重視で家族組合が中心
■胡椒勘定、毛織物勘定などの具体的な勘定を開設
■商品が売却済みになった時点で商品ごとに利益計算すれば、それで足りた
■これを口別損益計算と呼ぶ■中世フィレンツェは共和制。一般市民の期間組
■期間を区切った利益分配が必要
■実地棚卸で総資産と総負債を記録した「ビランチオ」を作成。差額の純資本を求め、その前期と今期の比較で利益を求める
■これを前期先駆的期間損益計算と呼ぶ
■実地棚卸だけによる損益計算では利益の信憑性が問題
■そこで、実際の取引の継続的な記録にもとづく損益計算が要求された
■これを後期先駆的損益計算と呼ぶ
■ここに至って初めて、複式簿記が完成したといえる
■後に非定期でなく定期的な損益計算となる
■簿記の本質を利益の二重計算、すなわちフローとストックの二つの側面からの損益計算と定義すると、複式簿記の発生は13世紀のイタリア、完成は14世紀
■勘定間が有機的な関連をもって、一つの閉ざされた体系的組織を形成しているか否かが重要なメルクマーク

キャッシュフロー計算書。利益はどこに消えたか
■発生主義による損益計算では、利益が出ているにも関わらず、いざ設備投資を行おうとした時、支払い資金が手元にないことに気づいた
■「ダウライス製鉄会社」の担当者は頭を抱えた。利益はどこに行ったのか
■この切実な疑問に応えるため登場したのがCF計算書の原点である比較貸借対照表
■利益は2時点間の純資産の増減を比較することによって求められる。よって2時点間の貸借対照表を比較すれば、その原因、利益の行く先がわかるのではないか
■よくぞ思いついたものです
■発生主義で求めた利益は、それだけの現金が手元にあることを保証しない
■利益だと思っていたものが、実はお金ではく在庫や債券や石炭であることに初めて気づいた
■発生主義の利益と手持現金との差額の原因、その矛盾を補完するものがCF計算書